徳島県小学校教育研究会 図画工作部会
 

研究計画

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2012/03/07

平成24年度 図画工作部会研究主題

| by:図画工作部会

  

                 
平成24年度 図画工作部会研究計画
                                             
1 研 究 主 題
   かかわり つながり 思いを豊かに表現する子どもの育成
2 研究主題設定にあたって
   これまでの「生きる力」の基本理念を引き継いだ新学習指導要領が平成23年度より全面実施された。図画工作科についても,理念を継承しながら内容などの改善が図られた。
  図画工作科の目標として,表現や鑑賞の活動を通して,感性を働かせながら,自らつくりだす喜びを味わうようにするとともに,造形的な創造活動の基礎的な能力を高め,生活や社会と主体的にかかわる態度を育て豊かな情操を養うことが示された。今回,「感性を働かせながら」の文言が新たに加わった。これは,表現や鑑賞の活動において,子どもが持っている感覚や感じ方などを一層重視することを明確にするためである。「感性」は,様々な対象や事象を心に感じ取る働きであり,知識や理解などと一体となって創
造性をはぐくむ重要なものである。「感性」を働かせることよって生まれる気づきや感動,学習意欲から,子どもは,形や色,イメージなどをとらえて,自分自身と対話したり周りの人たちと交流したりし,思いを豊かにに表現し,よさや美しさなどを感じ取っていく。
  図画工作科が目標とする豊かな感性や情操を育てるために,よさや美しさを豊かに感じ取ること,自分の思いや考えを生かしてつくりだすこと,その喜びを実感的に味わうことなどを重視している。また,子どもが自らの行為や感覚をもとに形や色,イメージなどを活用して活動することができるように領域や項目などを通して共通に働く資質や能力〔共通事項〕を生かし,表現や鑑賞の過程で働く力を明確にするとともに,それらが関連して働くように内容の改善を図ることが求められている。
  これまで,図画工作部会は,「造形活動における『対象』とのかかわり」,「学習内容の系統性」,「造形表現の基本的なことがら」,「地域の『ひと』『もの』『こと』とのかかわり」を研究の視点とし,「各学年で指導すべき内容」や「思いを豊かに表現する題材や指導方法」について研究し成果をあげてきた。平成22・23年度には,「子どもがどのように感性を働かせているかを〔共通事項〕の視点からとらえて具体化し,どのように目標を設定したり指導や評価を考えたりすればよいか」を研究の重点内容にして取り組んだ。〔共通事項〕から子どもを見つめたり,それらを表現及び鑑賞の学習の基盤となる指導事項として考えたりすることで指導の改善を図ることができた。
  本年度は,これまでの「かかわり」「つながり」「思いを豊かに表現する」を視点とした研究で得られた成果を生かし,本県の図画工作科の課題解決に向けて取り組む。具体的には,「子どもが感性を働かせ,意欲的に表現するという一連のプロセスを通して,発想や構想の能力を具体的に発展させる指導をどのように工夫するか」,「子どもが材料や用具を十分に用いながら,試行錯誤をしたり,製作の手順を考えたりする
などを通して,創造的な技能をどのように育成するか」という課題である。そこで,研究主題「かかわり つながり 思いを豊かに表現する子どもの育成」を通して,課題解決の方向性や具体的な改善策を明らかにし,図画工作科の指導の改善を図りたいと考えた。
 
3 研究主題についての考え方
(1)「かかわり」とは
  造形活動を豊かにするために,子どもが「表現材料」(何で),「表現内容」(何を),「表現方法」(どのように)と主体的なかかわりができるように指導を改善する。その際,子どもが自分の感覚や活動を通して形,色,動きや奥行きなどの造形的な特徴をとらえ,それらを基に自分のイメージをもつ〔共通事項〕の視点で,これまでの指導内容や方法を検討し,表現や鑑賞が行われるようにすることが大切である。
   また,子どもは周りの人とのかかわりを通して,互いの違いやよさに気づき,自分の見方や感じ方,表現を広げ深めていく。造形活動の中に「ひと」「もの」「こと」とのかかわりを取り込むことで,好奇心や有能感,自己肯定感が高まり,主体的に造形活動に取り組む意欲や豊かな感性が育まれる。さらに,これらとのかかわりの中で,図画工作科の内容と実生活をつなげ,故郷のよさを発見したり,人々との絆を築いたりしていくことを実感としてとらえさせたい。
 
(2)「つながり」とは
  子どもの造形活動には,「こうしたい。」「あっ!あの方法も使える。」と,既習事項を生かし表現する姿が見られる。ここでは,これまでの経験や培った技能を基に,自分の感性を働かせ表現や鑑賞するという「つながり」(学びの連続性)が生まれているのである。子どもの発達段階に応じて,幼稚園,小学校,中学校の指導事項に配慮し,育成する資質や能力が身につくように年間指導計画や題材設定,指導方法等を工夫することが大切である。「つながり」を踏まえた指導を積み重ねることで,発想や構想の能力,創造的な技能が身につき,生涯にわたって芸術に親しむ態度や芸術文化を生活や社会に生かしたり豊かにしたりする態度が育っていくと考える。
 
(3)「豊かに表現する」とは
 表現活動においては,子どもの感覚や感じ方などを一層重視し,一人一人の子どもが自分の感性を働かせながら活動できるように造形活動を充実させることが必要である。さらに,発想の手がかりになるような視点や方法を示したり,表し方を構想するために様々な方法があることを提示したりする。また,子どもが十分に材料や用具に親しむ場所や時間を確保するとともに試行錯誤をしながら表したいことを 工夫したり,製作の手順を考えたりすることで,創造的な技能の育成を図る。
 鑑賞の活動では,身近な作品の形や色などの造形的な特徴,表現の意図や表し方の工夫を具体的にとらえたり,話し合ったり,時には自分のつくったものを友達と交換して遊んだりするなどして,子どもの鑑賞の能力を効果的に育成することが大切である。
  表現と鑑賞は本来一体であり,相互に関連して働き合うものである。これらの活動を充実することで,豊かな表現が生まれ,感じ取る力が育まれる。


4 研 究 内 容
(1)発達段階や指導の系統性を踏まえた指導計画の作成
   今回の学習指導要領の改訂では,子どもの発達段階に応じて,各学校段階の学習内容の連続性に配慮し,育成する資質や能力と学習内容との関係が明確に示された。つまり,子どもの発達段階に即した適切な題材の設定や各教科,道徳,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動との関連を意識した題材の設定を行うことが大切である。
   指導すべき内容や事項を踏まえ,題材の焦点化や題材の配列の工夫,適正な評価から指導計画を作成する。その際,子どもの学習意欲を高めるために,発達段階に応じて,系統性を踏まえた学びが展開できるように工夫する。
   さらに,「A表現(1)材料を基に造形遊びをする活動」と「A表現(2)表したいことを絵や立体,工作に表す活動」のバランスを考える。それに加えて,〔共通事項〕の視点から,これまでの指導計画や内容,方法を検討し,目標を設定し,具体的な指導と評価を考える。
   
(2)豊かな表現を支える指導方法の改善
   子どもは,指導者から提示された題材に触発されて思いを膨らませ,表現活動や鑑賞活動を通してよく考えたり,さらに思いを深めたりする。だから「おもしろそうだ。」,「やってみたい。」という気持ちが喚起するように,身近な材料に対する見方を変えてとらえさせたり,子どもの必要感や表したい思いに沿った題材を設定したりするなど,学習指導を工夫する。
   次に,感性を働かせ,思考・判断し,創意工夫して表現したり鑑賞したりするという一連のプロセスを働かせる力を育成するために,主題を発想し,構想を立て,手や体全体の感覚を働かせて材料や用具等を 十分に活用する場面を工夫する。その際,これまでの学びと系統性に配慮し,造形活動の積み重ねを図る ことで,子どもの表現が豊かになるよう指導方法を工夫,改善する。
   また,「話したり,聞いたりする」「話し合ったりする」などの学習活動を位置づけ,製作の過程で学び合っ たり,作品や身の回りの形や色,環境等から感じ取ったことを伝え合ったりするなど言語活動の充実を図る。
  自分の感じたことや思ったことを言葉にすることにより,対象の美しさや造形的な要素が明確になったり,対象を見る視点や自分が対象から感じ取ったこと考えたことなどが整理されたりする。これらのことで,表現と鑑賞が相互に関連し働き合い,豊かな表現へつながっていく。


(3)一人一人のよさを生かす評価の工夫
 教師自身が個々の授業の目標を明らかにし,何をどのように評価するのかを明確にする。そのために国立教育政策研究所の『評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料』などを活用し,評価の進め方や手順を工夫,改善する。
  評価の進め方として具体例を示すと次のようになる。
  ①各学年における図画工作科で育成する資質や能力や学習内容,子どもの実態を考慮し題材の目標を設定する。
  ②設定した目標について〔共通事項〕の視点から評価規準を設定する。
  ③評価規準を「指導と評価の計画」に位置づける。
  ④評価方法や評価資料を明確にする。
  ⑤造形への関心・意欲・態度,発想や構想の能力,創造的な技能,鑑賞の能力として観点ごとに総括する。
   また,教師の評価のあり方を,作品や製作過程の観察で得た評価情報などをもとに事例を持ち寄って具体的に研究したり,子ども自身による自己評価や相互評価,さらには家族,地域の人々からの情報を収集するなど複数の評価方法を関連付けて評価を行ったりすることも,子ども一人一人のよさを生かす評価につながる。
 
(4)地域の「ひと」「もの」「こと」とのかかわりの重視
  暮らしの中の造形や我が国や諸外国の親しみある表現などにかかわる学習では,作品などのよさや美しさを主体的に味わったり感じたりすることを重視する。故郷の自然や地域の伝統行事,体験活動などにかかわったり,地域の美術館と連携して授業や鑑賞の機会を設けたりして,地域の文化や伝統を大切にする態度の基礎を養うことは,地域を大切にし,人との絆を築くことにつながっていく。
  また,子どもの学びを家庭への通信や作品の展示などを通して,家庭や地域に積極的に発信することも大切にしたい。保護者や地域の人々の支援や協力,理解によって,表現や鑑賞においてダイナミックな活動が期待でき,地域の人々ともふれあうことができる。このような連携を図りながら,造形活動を展開することで生まれる教育成果も大きい。
 
5 研 究 方 法
(1) 本年度は阿南市を中心として研究計画を立て,研究や授業実践を通して研究内容の解明を図る。

                        
(2)各郡市研究会は,研究主題の解明に向けて共通理解を図り,研究や授業実践を行う。

(3)研究成果をまとめ,研究集録(第49集)を発刊する。

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