徳島県小学校教育研究会 総合部会
 

研究主題

生きる力をはぐくむ総合的な学習の時間の創造

       -協同的な学習を通して質の高い探究的な学習へ-

 
 

研究計画

平成22年度 総合部会研究計画    

1.研究主題

   生きる力をはぐくむ総合的な学習の時間の創造

       -協同的な学習を通して質の高い探究的な学習へ-

 

2.研究主題・副主題について

(1)研究主題設定の理由

中央教育審議会答申(平成201月)では21世紀は知識基盤社会であり、「新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す」としている。知識基盤社会では、「課題を見出し解決する力」「知識・技能の更新のために生涯にわたる学習」「他者や社会、自然や環境と共に生きること」など変化の激しい時代を主体的に生き、よりよい社会の創造に資する能力が不可欠である。これは「生きる力」そのものである。今回の改訂の基本方針において、理念として「生きる力」は引き継がれている。

総合的な学習の時間は、目標に「自ら課題を見付け」以下の「生きる力」を掲げ、その育成の中核を担っている。生活実践上の課題などの探究を通して、多様な他者と協同し、自己の生き方を模索する点からも知識基盤社会を生き抜く上で必須の学習である。その理念や基本方針については、今次改訂でもなんら変更はなく、総則から取り出し、独立章(第5章)を設けて記述することで教育課程上の位置付けはさらに明確化された。

本部会では、新しい学習指導要領の理念や基本方針の実現を図り、生きる力をはぐくむため、協同的な学習を通して、質の高い探究的な学習を目指し本研究主題として設定する。

(2)「協同的な学習」とは 

 今回新たに総合的な学習の時間の目標が示されたが、これは従前の総則の三つの「ねらい」のうちの(1)自ら課題を見付け、・・・及び(2)学び方やものの考え方を身に付け、・・・を踏まえながら、「探究的な学習」や「協同的」の文言が加えられたものである。この時間の学習活動をいっそう充実させるためには、探究的な学習の過程を協同的な学習を通じてどうイメージし、構成するかが鍵となると言えよう。

協同的な学習は、これまでも広く実践されており、学校現場としても受け入れやすいため、今後も協同的な学習の機会をより豊かにしようとする動きが活発化することが予測される。しかしながら、他者との協同的な学習が、単にグループで学習するという形態的な側面でのみ理解されていたり、協同する対象が教室内での子どもたち同士に限定されていたりする現実がある。協同的な学習が、単に学習形態を組織することの配慮に留まっているようでは、そこでの学びが生き方に深まるまでには至らないであろう。

なぜなら、総合的な学習の時間で取り上げられる課題は、「答えが多様で正答の定まらない問い」といった性質のものであることが多いからである。さらに、多様な視点からの探究を通して、納得できる見方や考え方、解決の方途等を自分たちで生み出すことが求められている課題でもある。したがって、価値を共有する仲間だけでなく異なる立場の人々も含めた多様な価値や立場の人材とともに、多様な形態を伴う学習活動が望まれる。先の中央教育審議会答申は、これからの社会においては、「自己との対話を重ねつつ、他者や社会、自然や環境と共に生きる、積極的な『開かれた個』であることが求められる」としている。他者と協同して地域社会の生活実践上の問題の解決に主体的に参画し、円滑で協同的な人間関係を形成する資質や能力及び態度が求められているのである。総合的な学習の時間において協同的な学習を行うことは、こうした資質や能力及び態度を育成する場として大きな期待がある。

こうした協同的に学ぶことの価値として、「小学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編」では、「多様な情報の収集につながること」「異なる視点から検討ができること」「相手意識を生み出したり、学習活動のパートナーとしての仲間意識を生み出したりすること」の三点を挙げている。また、協同による学習活動は、かかわりの対象を学級の仲間に限定せず、他の学年や教師、地域の方々や専門家など学習活動にかかわるあらゆる他者に広げることも必要となる。第三回の林崎大会でも見られた地域の人材と積極的に交流する授業を構想したことにも一つの方向性が示されている。

多様な他者との交流や連帯を通じて、子どもたちは他者の生き方を自己の生き方や将来の姿と重ね合わせ、他者のよさを発見するとともに、自分のよさを自覚する。学習の質を高め、探究的な学習の過程を実現するために協同的な学習の役割は大きい。  

(3)「質の高い探究的な学習」へ 

探究的な学習は問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の学習活動である。探究的な学習を通して、子どもたちの学びは深まり、その中で新たな認識を得たり、目指す資質や能力及び態度を身に付けたりしながら、自己の生き方を考えることができるようになる。こうした豊かな学びが成立するためには、教材開発からカリキュラム評価までの探究的な学習を具現するために必要な教師の指導性が求められている。本部会では、第一回の宍喰大会から第二回学島大会、そして第三回の林崎大会までの間、「テーマ」を明確にし、「ゴール」を目指す実践を積み重ねてきた。「テーマ」と「ゴール」の設定によって、見通しをもった学びとなり、探究的な学習を実現することができた。

そこで、これまでの本部会の取組を踏まえて、協同的な学習の在り方を問い直しながら、探究的な学習の過程を質的に高めていくことを目指したい。協同的な学習活動を踏まえた探究的な学習の姿を明らかにすることが質の高い探究的な学習の実現につながると考えるのである。今回の学習指導要領では、探究的な学習をすることを総合的な学習の時間の要件として明示している。これまで体験に終始しがちだった学習活動も、日常生活や身近な社会・自然の中から課題を見出し、自ら学び考え続けるという探究的な学習となるように充実させていかなければならない。そうした中で、どのような他者と、さらにどのように協同するかを明らかにしていくことにより、教師の支援の具体的な方策が明らかになってくる。他者と協同する学習活動においての教師の役割を明確にすることで、より質の高い探究的な学習は実現され、総合的な学習の時間の学びの質をより高いものにしていくことができよう。質の高い探究的な学習を通して生きる力をはぐくむ総合的な学習の時間を創造すべく本研究主題を設定した。

 

3.研究の視点と内容

(1)見通しをもった学びにする      

・目標や内容、育てたい力など、学年間の関連を見通し、長期的な視野にたった全体計画を整備する。

子どもの学びや保護者の願い、地域や学校の実態を分析・把握するとともに、外部の教育資源の活用や交流等を意識し、十分な見通しをもった年間計画を立案する。

・子どもの興味・関心、問題意識、願い教師のねらい等を絡み合わせた教育内容である「テーマ」を適切に取り上げる。

・子どもの行動目標となる「ゴール」を、いつ、どのような手順で設定することが適切かを検討し、ゴールは学習の深まりと共に変化することも視野に入れて柔軟かつ弾力的に対応する。

(2)協同的な学習過程にする

実際の生活の中にある問題や事象を取り上げた具体的な教材、多様な意見や考え方を引き出せる教材、異なる視点をもった人材と交流できる教材等、協同的な学習が生まれる教材を開発する。

たとえば以下のようなものが考えられる。

例①身近な自然環境とそこに起きている環境問題

②地域の伝統や文化とその継承に力を注ぐ人々

③食をめぐる問題と地域の農業や生産者

課題を設定する段階、情報の収集や整理・分析の段階、学習をまとめ・表現する段階のそれぞれにおいて、多様な形態を伴って、他者と協同する学習過程を構想する。

自分の意見や考え方を適切に表現するために、教科・領域等で培った力を双方向で生かし、学びのよさを体感できるような場面を設定する。

 (3)他者と協同して取り組む学習活動を充実する

・多様な情報を適切に活用するための学習活動を工夫する。

・様々な角度からの意見を交え、課題や論点が明確になる話し合い活動を充実させる。

・個々の体験や考えを整理・構造化し、関連させていく支援を行う。

たとえば以下のようなものである。

例 KJ法、ウエビング、ブレーンストーミング、付箋紙の活用など

(4)探究的な学習に応じた多様な学習集団を設定する

・学習形態においては、個人追究による学習、グループによる学習、学級による学習、学

年による学習、異年齢集団を編成しての学習等それぞれの特長を踏まえて学習活動を展開する。

・グループ編成においては、興味・関心によるグループ編成、課題や訪問先によるグループ編成、表現方法によるグループ編成等を柔軟に組織する。

(5)評価と支援の一体化を進める

 育てたい子ども像や身に付けさせたい力を明確にし、いつ、どこで何を評価するかを設定し、一人一人の子どもを見取り、長期的に評価する。

・子どもの活動の様子をメモや写真で残したり、活動後に覚えていることを記録したりして、教師用ポートフォリオを作成し、評価や支援に生かす。

子どもの振り返りカード等を工夫して、学びの履歴を残し、子どもが自分を見つめ直す

ことができやすいようにする。

・自己評価、相互評価、他者(ゲストティーチャー・保護者・教師等)評価を充実させる。

(6)学習環境や地域の教育資源・教育力を生かす

・校内組織や校内環境を整備する。

・地域の自然・人・文化などにかかわる教育資源調査を行い、教材化を図る。

 ・ボランティアや保護者等の人材バンクをつくり、ネットワ-ク化を図る。

 ・他校や社会教育施設、社会教育団体、NPO法人、企業等との連携を図る。

 ・図書資料やICTの活用、近隣の図書館との連携を図る。